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Malicosmos ―高橋真理子の小宇宙

malicosmos.exblog.jp

「つなぐ」「つくる」「つたえる」「とどける」 これが自分の仕事のキーワード

「つなぐ人フォーラム」を振り返って1

 「つなぐ人フォーラム~自然・文化・地域・人をつなぐ」というタイトルのフォーラムが、9月7日~9日の2泊3日、満天の星ふる清里にて行われた。
 環境教育という言葉がなかったころに、「環境教育ミーティング」を立ち上げて、20年になる川嶋直さん(キープ協会・立教大学)からなんとなく声がけがあったのは、2007年の最初のころだったか。ハードをもって、ミュージアムなどでインタープリテーション活動している人たちと、川嶋さんたちのように、自然と人の間でインタープリテーションしている人たちが、驚くほど?交流がなく、互いが知り合えばきっと面白いことがあるのにね、ということは、以前から気になっていたことごと。ミュージアム系のほうの状況を知りたいとのことで、まち研究所の重盛さんを連れて立教大学で川嶋さんと広瀬さんとお話させていただいたのが2007年5月。その後、このフォーラムの最初の実行委員会みたいなものが2007年8月で、その際には、すでに今回の委員の人たちの名前があがり、その顔あわせがあったのだった。

何か新しいものが生まれるというのは、まったく無のところから生まれるものはむしろ少なく、今までにない「組み合わせ」をつないだときに生まれる、ということは、だいぶ前にプランナーの勇崎哲史さんに言われて、まさしくそうだ!と思ったことがある。
ミュージアムと一言でいっても、その多様性は言うまでもなく、それに関わる人たちを一くくりにできるわけでもない。ましてや、プラネタリウムというもっともっとせまい世界の中でさえ、それはくくれない。でも、確実にあるテーマや分野に集う人たちの会には、それぞれの色や雰囲気がある。

それまでに自身が所属していた学会やプラネタリウムの集まり、ミュージアム関連の集まり、どれともまったく違って、なんとも多くの驚きと気づきを与えてくれたのは、2003年11月に赤城で行われた「第2回全国教育系ワークショップ
だった。それ以前に、川嶋直さんには、うちの館の運営委員をやっていただいたことから、彼が育ててきた「場」と「人」そしてその手法などを聞いて、「ワークショップ」という言葉がだいぶ気になりだしていたころだ。全国教育系ワークショップは、今回実行委員でご一緒した西村佳哲さんが実行委員長をつとめていて、その前年度の初回からお知らせはいただいていたので、2003年は奮い立って参加した。群馬の赤城、そのころ蒼太はまだ4歳になりたてで、こちらは2人目をおなかに抱えてつわり中であった。なかなかつらいものがあったが、それでも行って「ほんとうによかった」会だった。結局、その会はその2ヵ月後に行った「大人のためのクラブ活動~プラネタリウム・ワークショップ」を企画する原動力になったから。そして、それが、今の活動のもろもろの原点。

今回のフォーラムを言い出した川嶋さんと小林毅さんには、その先に「アジアの人たちを巻き込んで」行いたい意向があるため、当初は「アジアインタープリテーションフォーラム」が仮称としてついていた。「インタープリテーション」という言葉は、環境教育系、野外教育系の人たちの中では、かなり定着している言葉になっている。自然と人の間にたって、その仲立ちをする人。けれども、その言葉の元の意味を考えれば、「翻訳」ということなので、何か難しいことを「わかりやすく」解読して、伝えてあげること、というイメージがどうもぬぐいきれない。また、科学館みたいなところでも、科学未来館などは一時期、科学インタープリターという立場の人たちがいたりしたが、他のところへの広がりはあまりないままに、今は科学コミュニケーターという言葉のほうが多く使われるようになってきた。そんなこんなで、インタープリテーションという言葉を、会の名前にそのまま使うのはちょっと抵抗があった。なによりも、施設系やプラネタリウム関連の人たちを呼ぶには、ちょっと距離がありすぎるようにも感じたから。
そんなこんなで、タイトルを考えた実行委員会は、今年にはいって1月14日の会議。(そのとき、私は1月12日の星つむぎの歌完成イベント直後で、興奮がまだ続いてた(笑))
そのときのホワイトボード、写真にとっておきたかったなあ・・。そこで決定した「つなぐ人」という表現は、今回の第1回を終えて、とても好評で、その言葉は、ぜひ続けて欲しいという意見が多く聞かれた。
けれどもインタープリテーションや「伝える」という言葉も多く(非常に自然に)使われる中で、タイトルが決まったのちに、この会はいったい何か?という話になるたびに(フォーラムの最中にも)、「伝える」なのか「つなぐ」なのか、というところで、何度も議論が起きたりしていた。 

フォーラムの中身の報告になかなかいかない(笑)。
一言で言えば、とても面白かった。実行委員の立場を忘れて、利己的な言い方をすれば、自分の活動に、心から?共感してくれる人たちがいるのが嬉しかった。これまた誤解を恐れずにいえば、いわゆる同じ業界の人たちからはあまりない反応が、こういう場ではなぜかたくさんあって、それは、去年参加した「アートミーツケア学会」もそうだった。

1日目の大事なオープニングは、その日、甲府で行われていた郷育フォーラムのお手伝いのために欠席、その日の夕食からの参加だったけれど、最初の欠席はさほど問題にならないというぐらいに、さっとケアをしてくださるのが、この場の素敵なところでもある。
夜の15分プレゼンは、「身内」の跡部さんが「ライトダウン甲府バレー」について発表。これまで何度かこの発表を聞いていたけれど、これまたこんなに反応してくれたのもはじめてじゃないかしらん。それに続く発表はどれも、刺激的。松井さんの発表がきっかけで、3日目は「戦略会議」を一緒に行うことに。星空インタープリターをやっていらっしゃる鈴木さん(たかさん)の発表もまた驚き。彼が「星空のある風景」を多くの人たちの心の中につくりだそう、としていることが多く伝わる。違う活動分野でありながら、どこか「つながって」いることを、個々が感じた5つのプレゼンだった。

2日目、重盛さんと一緒に企画するワークショップが2つ。朝一番の全体会の中で、8つのワークショップをそれぞれ3分ずつプレゼンテーションして、その後、参加者がサインアップするという形式。 まったく進行準備をしてなかったのが正直なところであったが、私たちには強い味方があった。 4mのプラネタリウムドーム。 全体会の部屋のうしろに、そのドームがふくらんでたっていることに、誰もがわくわくしだして、中をのぞく。この丸さや、暗闇がたまらない魅力なんである。プラネタリウムのほうは、いつもお世話になっている高尾さんから借りたプラネタリウム。
午前中の「星空の下でのコミュニケーションを体験しよう」というワークショップには、語り部の埜村和美さんをお呼びして、彼女も参加者の一人としてまじってもらった。
4mドームに18名の大人。星空の中で思い出すことを、2人一組で語ってもらい、相手の思い出をみんなの前で話をすることで共有する。お父さんの背中でみた星空、テニス仲間とみた星空、「ぞっとする」くらいに自分の存在に気づいた星空・・・そんなことが一通り語られたのちに、一度外へ。休憩後、それらを振り返って、また気づいたことをキーワード的に出していったそのとき、こちらが予想していなかったのが、まだ「思い出話」が次々と出てきたことだった。人の話をきいていたら大事なことを思い出した・・といって、彗星を家族とみに海外までいったけれどみられなくて、家にかえってから彗星の絵を描いた思い出、夜の海に浮かんで見上げた満天の星空・・「思い出の連鎖反応」を思った。そして、面白かったのは、「何かを思い出そうとするときに、人の顔というのは自然に上に向くんですね。だから、星を観るというのと、思い出すという行為は一体化しているのかも」という発言。
人々の中にある記憶をひっぱりだして、それをたった今につなげる作業、これは、人々が日日おこなっている「学び」の行為にほとんど似ている。
最後の50分ほどで、「プラネがもし使えたら」「自分のフィールドに星の視点をもちこんだら」「思い出をキーワードにどんなことができる」「そのほかなんでも」というグループにわかれてちょっとした企画ミーティングをやってもらった。それぞれに素敵な企画・言葉が飛び出していた。
何か明確な目的をもたない、人々の中にある「何か」をひっぱりだして、そこで考えようというこのワークショップ、参加者のみなさんからの感想の言葉からは、
星がもっているその不変性、そのことによって共有できることごと、そして「思い出」の共有が、その場をつくっていくこと・・・などに気づいてくださった、と感じてる。
実をいえば、そのときの進行はずっとドキドキで、自分自身の中では反省も多く残る。けれども、もともとキャパの広い人たちに恵まれて、なんだかちゃんと受け入れてくださって、ありがたい、の一言。

引き続き、午後のワークショップ。重盛さん提案の、「記憶をつなぐワークショップ」。
ゲストにおよびしたのは、「ベガ」を何度もみにきてくださっている宮沢哲夫さん。彼のその人柄がなんとも素晴らしく、彼を囲んでプラネドームの中で話をしていたら2時間があっという間にすぎて、みんなびっくり・・だった。
ここで得たのは、「場づくり」のために必要なこと・・ということだったかもしれない。重盛さんがブログに多くを書いてくださっているのでそちらもぜひ。

・・そんなこんなで、まだ2日目の夕方。書きつかれて、とりあえず今日はここでアップ。
いずれにしても、朝7時から25時まで続くのに、みんなとっても元気な会なのだった。
by malicosmos_meme | 2008-09-12 03:25

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